もっとも、仮に他者の心を正確に推論できたとしても、おれが円滑な相互作用や幸せな他者との関係につながるわけでもないだろう。他者の痛みや欲求、自分に対して持つ悪意を正確に知ることは、日常に大きなストレスをもたらすことになる。加えて、自分の心を他者に知られてしまうことになるわけで、これもまた不都合な事態を生じさせるだろう。それなりの不正確さやバイアスの存在ゆえに心の推論が日常生活で機能するのかもしれない。なぜ心を読みすぎるのか みきわめと対人関係の心理学 p.126